2021/01/05 22:03

以前、ジュエリーを撮影している時に、そのカメラマンが発した忘れられない言葉があります。その単純な一言は「カメラに写っている事が本当のことです」
つまり、「人間は目や脳の錯覚などで、本物を見ていない」というのです。
僕は「なるほど・・」と思いながらも完全に納得したわけではありませんでした。
「では、写真(本物。本当のこと)を見て、実物のジュエリーと同じように見えないのはなぜだろう?」禅問答のようですが不思議なのです。

さて、このブログに載せているジュエリーの写真は僕が撮影したものですが、プロでない僕が撮る写真は、絶対に実物の美しさを正確に写し撮ることはできません。
綺麗に撮れている写真でも、そのものが発していて、肉眼で感じることの出来る、本来の美しさを捉えることは決してありません。本質を写し出すことは不可能です。

特に難しいと思うのは、ミル打ちされたプラチナのデリケートな装飾を撮影する時です。
ダイヤモンドの輝きを引き立てるプラチナの白い輝きは、ジュエリー全体を優しくキラキラ輝かせるのですが、写真に写すとミルの部分が強調され、ジュエリーの放つ ”優しいキラキラ” 感が無くなってしまうのです。


この一辺が2.8cmの菱形の作品も、画像よりも遥かに柔らかくデリケートな輝きに包まれています。
中心のダイヤモンドは約0.8カラット。かなりモダンなカットに近づいていますが、厚みがあってキューレットに面が付けられています。
ダイヤモンドに厚みがあると、輝きに奥行きを感じさせ、落ち着きが生まれます。
この感じは、現代のブリリアントカットでは、3カラットを超えるような大粒のダイヤモンドでないと分からないものですが、古いカットでは、この位の大きさでもこの感じを味わうことが出来ます。


中心のダイヤモンド クラウン部分が現代のカットより厚みがあるのが分かる

デザインを見ると、中心のダイヤモンドの対角線上に花が置かれています。それぞれの花の間に出来た空間に、大小のダイヤモンドを配置。この部分はダイヤモンドを円形の線で繋いでいます。四隅の空間にもダイヤモンド。
花と花は結ばれていて、この部分はリボンがクルっと捻じられているように表現されています(画像では分かり辛いかもしれません)。ルーペを覗くと実際は捻じられているわけではないのですが、捻じれて見える。
人間の目の錯覚を利用しているのです。
職人さん曰く、「捻じられていないし、左右から来るラインの高さを変えてあるわけではない。なのに、どうして捻じれて見えるのかわからない。鏨の入れ方なのか…??」5人の職人が集まって検討しても分からないとのことです。不思議です。
このようなテクニックは、職人の中で伝承されてきた匠の技。途絶えてしまえば再現するのは難しいのです。 


ルイヴィトンのロゴに描かれているような花が連なる
裏側はゴールドの土台ではなく、プラチナだけでフレームが作られたシンプルもの。このようなスタイルはわりと珍しいものですが、カルティエやショーメ、メレリオなどの大作に見られスタイルです。ゴールドの土台がある物よりも重量も軽い。
例えばティアラなどは大きいし頭に載せるので、軽い方がいい。ストマッカーなどもそうですね。
強度を保ちながら軽く仕上げるのは高い技術力が必要です。

ブローチとして使うときはバチカンを後ろに倒す

菱形の対角線の長さは4.0㎝、バチカンを含めれば4.5cmの立派なこの作品は、完成されたデザインと素材の良さ、そして現代では再現不可能な匠の技術の結晶といえるものです。
一目で高級感を感じさせると共に、溢れるばかりの気品が、私達を虜にする素晴らしいジュエリーです。

何度も申しますが、実物を見なければこの素晴らしさを理解いただけません。是非見にいらしてください。


商品ページはこちらより

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♦︎製作年代:1900年~1910年頃
♦︎製作国:フランス or イギリス
♦︎素材:ダイヤモンド、プラチナ
♦︎サイズ:2.8㎝×2.8㎝
♦︎定価:お問い合わせください
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